西本智実指揮「新世界」ツアー モンテカルロフィルハーモニー管弦楽団 2008.6.29 大阪フェスティバルホール
モンテカルロ・フィルハーモニー管弦楽団
大阪公演 2008年6月29日(日曜日)14時開演
フェスティバルホール
さて、今日は,西本さんの地元、大阪での開催です!
あいにくの雨模様でしたが、開演1時間前からホールはお客さんで一杯でした。
隣のお客さんもおっしゃっていましたが、今日のプログラムは、面白い組み合わせです。
オペラから、ピアノ協奏曲、そして交響曲と、ジャンルも様々で、かつ作曲者の故郷や活躍の場も
ビゼー(フランス、『カルメン」の舞台はスペイン)、ショパン(ポーランド、作曲の場はフランス)、
ドヴォルザーク(チェコ、交響曲第9番の舞台はアメリカ)、と様々です。
さあ、曲に入りましょう!
1.ビゼー オペラ『カルメン』第1組曲 Georges Bizet "CARMEN"
第1曲: 第1幕への前奏曲
第2曲: 第2幕への間奏曲(アルカラの龍騎兵) 第1幕 第11曲: フィナーレ 間奏曲
第3曲: 第3幕への間奏曲 第2幕 第18曲: フィナーレ 間奏曲
第4曲: 第4幕への間奏曲(アラゴネーズ) 第3幕 第24曲: フィナーレ 間奏曲
第1曲はCMなどでもおなじみですが、何をして組曲というのか知りませんでした。
今日聴いた曲をHMVのサンプル音源と照らし合わせて、ようやく分かりました。
カラヤンが『カルメン』の全曲を収録しているので、参考までに併記しました。
タクトに血が通い、脈動し始めた瞬間、オーケストラが一気に走り出します!
それにつられて、観客も演奏に吸い込まれていきます。
『カルメン』前奏曲で、一番楽しそうだったのはコンサートマスターDavid LEFEVRE氏。
自分が座っていたのは、3列目のど真ん中(当日まで気付かなかった・・・)で、指揮者の真後ろ。
「しまった!」と思いましたが、コンマスのバイオリンの音がそのまま伝わってくる席でした。
爽やかな果物のような、トローっとしたメイプルシロップのような・・・。
いつ作られたバイオリンなのか、分かりませんが、いたずらっぽいような軽やかさをみせながら、
包み込むようなあたたかさと、懐の深さを感じさせる演奏でした。
それを支えているのが、確かな演奏技術であることはいうまでもありません。
コンマス氏のバイオリンを聞いていたら、このオケの特徴がつかめてきました。
とてもフレンドリーで、まとまりのあるオケでした。
選曲も、オケに合わせたのだと思います。
マーラーのような大編成を必要とする曲には向いていない様に感じました。
2.ショパン ピアノ協奏曲 第1番 ホ短調 Op.11 Frédéric Chopin
グランドピアノの屋根が全開になり、自分はその屋根のまん前にいるので、まるでCDを聴いている様な、
(ピアノの演奏をどう録音しているのか知らないのですが)音がストレートに自分に向かって飛んでくる、
そんな印象がありました。
関本昌平さんの演奏は、いい意味で、とても堅実だと感じました。
ピアニスト 関本昌平氏
しかし、この作品は特に最後の第3楽章のコーダ部分のアルペジオは
高度なテクニックとスピードを要求されると後で知り、それを表情を変えずに弾き切った
関本さんの素晴らしさを改めて知りました(コンマス氏は終演後感激のあまりhugしていました)。
印象に残っているショパンのピアノとオーケストラのための楽曲は初めてですが、これも大きすぎず、
まとまったオケだからこそ、非常にバランスがとれて聞こえたのかもしれません。
ショパンが、大ホールではなく、パリのサロンで演奏会を開き、そのための曲を沢山作曲したことにも符合します。
指揮者は足元しか見えませんでしたが、オケがピッタリと呼応しているので、全然気になりませんでした。
3.ドヴォルザーク 交響曲第9番 ホ短調 Op.95「新世界より」
Antonín Leopold Dvořák Symphony No.9 "From the New World" (チェコ語: Z nového svĕta)
<第1楽章>
冒頭のホルンの音はどうするのか?と思っていたら、西本さん指揮CD同様大きな音のまました。
CDとライブでは、ホルンの音量の感じ方の違いがあるのかもしれませんが、CDではかすれて大きな音だったのが、
今回の演奏では、哀愁を帯びたホルンの音色を活かした上での音量だったので、「いい!」
これも指揮者の解釈の違いですね。
作曲家がこの部分のホルンにどんな意味をを込めたのか、また勉強して、他の指揮者の演奏と聴き比べてみたいと思いました。
<第2楽章>
「家路」等の愛称で日本でも有名で、確かに親しみやすい旋律に変わるのですが、しかしあの放送で
流れてくるイメージとは全く違って、日本的なべたつき感はない。
あくまで交響曲の第2楽章としてどっしりとした安定感がありました。
<第3楽章>
自分の席からは木管と金管奏者が全く見えないのですが、音がとても安定していて、安心して
心をゆだねられました。
その透き通った響きに、この楽章だけ登場するトライアングルのキラキラした
音色が加わって、楽章が互いに連関を持ちながらもフィナーレに向かって変化していく様がありありと
わかりました。
西本さん指揮CDでは、冒頭の管の音が弱く、その後強くなるという、違和感を感じさせるものでしたが、
今回は出だしで管がばっと勢いをつけて、後につなげてくれるという、自然なものでした。
そして、管の後の弦のリレーションが見事!指揮者が左から右へ、バイオリンからビオラ、チェロ、
そしてコントラバスへ、中腰になりながら左腕を一杯に伸ばして翼のように旋回させ、オケがそれに
応える様は、「お見事!!」
指揮者と演奏家、プロ同士の丁々発止の遣り取り、そしてその中に深い信頼関係を感じました。
<第4楽章>
さて、第3楽章の興奮も冷め遣らぬ内に、聴衆に息つく暇も与えず、すぐ第4楽章に入りました!
この楽章はスズキのCMで一部分だけ何回も聴きましたが、その時は石畳の上を車が走る映像に合った、
鋭いのだが冷たい弦、緊迫感の中炸裂するような金管の音がどうもしっくり来ませんでした。 音楽が止まって、
西本さんの鋭い眼差しでCMが終わることから、キレを出したかったのでしょうが・・・。
しかし今日は違いました。もちろん、コンマス氏の優しい音に耳が張り付いていたのもあるでしょうが、
曲として非常にバランスが取れていました。幾重にも重なった分厚い弦音のカーテンの間から、
金管が登場し、力強く主題を奏でる。吸い込まれるように音の世界に入り、身をゆだねました。
それをリードする西本さんの、緻密で力強い指揮!!「(指揮している時は)頭の中で音楽が鳴っている」とおっしゃっていましたが、
間断なく、数手先を見越しながらリードすることで、なめらかでのびのびとした演奏を可能にし、演奏者の能力を最大限に引き出す。
それが、指揮者です。背中を見ながら「これなら大丈夫!世界へ!」と何度も呟きました。
指揮者は演奏者から音を引き出し、まとめる本来地味な存在です。
その積み重ねが、指揮者としての信頼、評価に繋がると思います。
西本さんには、これから先何十年と、世界中の演奏家たちと一緒に、聴衆を魅了し続けて欲しい。
そう強く感じました。
4.アンコール
ビゼー 『アルルの女』第2組曲 第4曲 ファランドール
リズムのいい、軽快な音楽でしたから、聴衆の沸きあがった喜びにさらに火をつけました!
「ブラーボ!」の嵐!
<カーテンコール>
コンマスDavidさんと、1st violin SupersolosでDavidさんと双璧をなすLiza KEROBさん、
そして西本さんの3人で登場してくれました。
西本さんは、第4楽章が終わってしばらく、両腕を下ろしオケの方を向いて、じっと立っていました。
聴衆の側に向き直った時、目線はやや右下で、緊張から解放されて一瞬ちょっとぼうっとした
表情でした。そう、やり終えたんですよ!!
ようやく、西本さんに笑顔がこぼれました。お疲れさまでした。ゆっくり休んで、さあ、世界へ!
2回目、コンマス氏が引っ張ってきましたが、第4楽章で白い顔を真っ赤に上気させて
熱演していた彼は、興奮も冷め遣らぬまま、西本さんの左手、次に頬に口づけをしていました。
会場は大喜び!
まだ会場の興奮が冷め遣らぬので、今度は西本さんを先頭に、団員たちが次々に出てきてくれました。
ただ、舞台に向かって手を差し出す人に、西本さんが応えたので、皆さんが舞台に押しかけて、スタッフが止めに入る(1人ではとても止められる勢いではなかった)シーンがあり、パニックにならないか心配になったが、
皆さん良識があってよかった。
西本さんは、立ち見の出るほど聴衆の埋め尽くした会場を見渡して、そこかしこに丁寧にお辞儀をしていました。
<見送り>
こんなことしていいのか、と思いつつ・・・。
まあ、どこから出るか自分は全然知らないので、建物の周りをぶらぶらしていたら、
バスが止まっている。もしや、コンサートのバスツアーか?と思ったら、オケの皆さんが
すっかり着替えてバスに乗り込んだり、外で待ったりしていました。
こんな風に指揮者を出待ちする日本人が珍しいんでしょうねえ・・・、こちらに向けてデジカメ
で取っている方も。
真ん中に写って、大きな口をあけて笑っているコンマス氏は終始陽気で、やっぱりオケのムードメーカーといった風でした。
最後、大きな銀色のジェラルミンケースがバスのお腹に納まり、その持ち主である西本さんが登場
しました。ファンは大興奮、写真を撮ったり、一斉に駆け寄って、スタッフに制止されていました。
西本さんは、すっかり落ち着いた様子。青紫だったかなあ、襟付きのシャツを着て、できるだけ冷静に
ファンに対応していました。さらに窓際に座るサービス。・・・演奏以外でも、気を使いますね。
ただ、バスが発車するときにファンがバスから離れないシーンが・・・。危ないぞ。
2台に分乗して、バスは発車しました。
演奏者の皆さんも、手を振ってくださったのが嬉しかったです。 "Veuillez venir encore à Japon!"「また日本へ!」 (あっているかな?)
駅までの帰り道。雨に濡れる淀屋橋。
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投稿者: bless 日時: 2008年07月01日 01:57 | TOPページへ ▲画面上へ
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