人の繋がり 川端 康成氏の誕生日によせて 第2回目
前回よりずいぶんと時間が経ってしまいしましたが・・・
さて、いかに天才といえども、文壇に上るのはそう簡単ではなさそうです。 川端 康成氏の場合、東京帝国大学に在籍中、同人誌第6次『新思潮』に投稿した「招魂祭一景」が菊池寛らに評価され、文藝春秋社を創設した菊池寛によって1923年に創刊された『文藝春秋』(今でもベストセラーですね)の同人となりました。
菊池 寛 1888年(明治21年)12月26日 - 1948年(昭和23年)3月6日 菊池寛アーカイブより
その『文藝春秋』創刊の辞が、揮っています。
「私は頼まれて物を云うことに飽いた。
自分で、考えていることを、読者や編集者に気兼なしに、自由な心持で云って見たい。
友人にも私と同感の人々が多いだろう。
又、私が知っている若い人達には、物が云いたくて、ウズゝしている人が多い。
一には、自分のため、一には他のため、この小雑誌を出すことにした」
菊池氏の奔放だが人を思いやる優しい人柄、そして行動力を感じます。
さて、次の写真をご覧下さい。
1919年の集合写真。
左から2番目が芥川龍之介、 一番左は菊池寛。
菊池 寛は4歳年下の芥川 龍之介と「真の友人」でありました。
2人は第一高等学校の同期生であったことから交友が始まります。
同期入学者にはに久米正雄、松岡讓、佐野文夫、井川恭(後の恒藤恭)、土屋文明といった錚々たるメンバーがいました。
芥川龍之介は、人を選ぶことなく広く交友しましたが、自意識が強く、「都会人という仮面」をかぶっていた彼が、
自分をありのままにさらけ出せる親友は限られていたようですが、その分、友人をとても大切にしたようです。
子供の名前は、それぞれ親友の菊池寛の「寛」(長男:比呂志)、小穴隆一の「隆」(次男:多加志)、恒藤恭の「恭」(三男:也寸志)
をもらって訓読みにし漢字を替えて名づけたものです。
芥川氏は昭和2年(1927年)7月、服毒自殺により世を去ります。
菊池氏は、棺に走りよって号泣したといいます。
その後1935年に故人の功績を偲んで芥川賞を直木賞とともに創設します。
その死の原因について、死の枕元に残された「或旧友へ送る手記」のなかにある「ぼんやりした不安」という箇所だけが一人歩きし、あたかも鬼才のメランコリー気質が高じて死に至ったような印象を与えているように感じます。
「或旧友へ送る手記」等を収録した『河童』(集英社文庫)
しかし彼の場合、身体の不調に、精神的不安定さがあったものの、それに追い討ちをかけたのが、ある身内の事件により
残された姉の家族と多額の負債のことで奔走し、負担が一層増したことでした。
同じく自殺した作家三島由紀夫氏が、芥川氏の死について、
「彼は自殺が好きだから自殺したのだ。(中略)そういう薄弱な精神を私は嫌いだ」
と批判し、さらに武士における切腹といった刑と自死を区別する表現がありました。
しかし、三島氏の取った行動は、やはり多くの人に衝撃と苦悩を与える結果になったと思います。
人が自死にまで至るには、必ず原因があり、殆どはその原因を解決ないし緩和すれば、防げるものと
私は考えています。
ですから、「或阿呆の一生」で、「できるだけ客観的に」自死にまで追い詰められた心情を分析した
芥川氏の葛藤を思うと、なぜ防げなかったのか残念でなりません。
人生には様々な出来事があり、それによって心の状態も変化します。
「真っ暗で何も見えない!」と思う日もあれば、ふと「今日の夕焼けは綺麗だな」と感じる日もあるのです。
「ゆく河の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず。
淀みに浮かぶうたかたは、かつ消え、かつ結びて、久しくとどまりたる例なし。」
この鴨長明著の『方丈記』の冒頭は、当時の天災や戦乱、飢饉を体験した著者の無常感を
表すとされています。
鴨長明(江戸~明治の日本画家、菊池容斎・画)
しかし、先人の努力でほぼ安定した生活を送れるようになった現代では、また違った見方ができると思います。
現代では、世界を動かしているのは、市民の集合意識であり、それを代表する国家のように思います。
つまり、各個人がより自由に、強力に活動するようになったということです。
おのずと個人間で「差」が明瞭になって来ます。
しかし、どの時点で、何の尺度を使って評価すれば、その人やグループの「価値」を計れるのでしょうか?
当然、絶対の基準はありません。
ならば、ゆく河(人生)の流れに身をゆだねながら、自分の物差しで生きていくことも可能ではないでしょうか?
意外と、現代は自由に生き方を選ぶことができる、可能性の広がった時代だと思います。
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投稿者: bless 日時: 2008年07月01日 00:30 | TOPページへ ▲画面上へ
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