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岩波書店
グループ:Book
ランキング:35022
価格:¥ 777
発売日:2008-06
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生命(いのち)をつなぐ進化のふしぎ―生物人類学への招待 (ちくま新書)
カスタマーレビュー ![]()
DNA世界の向こうの、驚異的な世界
(2008-12-28)
最高の名著だ。ものすごく面白い。息をのむような、タンパク質の世界が広がっている。本書は細胞生物学の読み物。それも、タンパク質の生成から消滅までを人の一生のように語った本である。
DNAの転写と翻訳を経て、アミノ酸が生成される過程は知られている。タンパク質はアミノ酸が集まり、複雑な構造を取ったもの。ではアミノ酸が生成されれば、タンパク質は自動的に形成されるのか。以前はそのように考えられていたらしい。DNAからタンパク質への過程はそう難しくないと。しかし、アミノ酸からタンパク質が作られるときには、DNAの物語に匹敵するほど凄まじい世界が広がっていることが明らかになってきた。それが、アミノ酸からタンパク質を作り出す際に助けとなる、分子シャペロン。分子シャペロンによるタンパク質の合成は、とても美しく、驚かされる。
ついで生成されたタンパク質は、細胞内の様々な場所や細胞外に運ばれる。その運搬(「交通」)の仕組みも驚かされる。細胞内にある、タンパク質を運ぶレール。そのレールを上り・下りどちらかに動くモーター。また、核やミトコンドリアでのタンパク質の取り込み方。
さらに、不要となったタンパク質の回収、リサイクル方法。ユビキチン・プロテアソーム系分解による選択的分解と、オートファージによるバルクの分解。タンパク質の効率的な分解、リサイクルの仕組み。
最後に、生成において不良品となったタンパク質への対処法。ここは製造業の工場での品質管理になぞられて説明されている。これはとてもうまい説明だ。生産ラインを止める、不良品を修理する、不良品を廃棄する、工場を閉鎖する。ここでも、細胞が備えているシステムのすばらしさに感嘆する。
総じて著者の説明の仕方がうまく、どんどんと引き込まれていく。そうして明らかになる細胞のシステムにただただ驚くばかりである。ここまで面白い生物学関連の本は、久々である。願わくば、次に読むと良い読書案内があるとよかった。そう思うほど、すっかりタンパク質の世界に魅せられてしまった。
かつて私は、このような健気なシャペロンを「細胞内の名脇役」と呼んだ。
(2008-12-20)
08年7月下旬頃の朝日新聞の日曜書評欄にこの著作が紹介されていた時の、歌人でもある著者が専門であるタンパク質について、人の一生になぞらえてまとめてみました、というような紹介文に、私自身の普段から抱く生命の神秘、そして著者の、何かとても豊かな印象を受け、手にとってみました。
私たち生物が膨大なタンパク質から成り立っていることの不思議さや神秘を、ずっと抱いてきましたが、ともすると生命をDNAメインで考えがちであった私には、視野をずっと広げてくれる刺激的な著作でした。「遺伝暗号が指定するのはアミノ酸の情報、正確に言えばアミノ酸配列の情報だけであった。」(57ページ)であって、「タンパク質が正しく作られなければ、細胞は生命を維持していくことができない。」(70ページ)なのですね。私たちを含めた生命の体の中で、実際に日々刻々と働くタンパク質の世界が非常に複雑・精緻で、その複雑さの中にも理路整然としたものを感じ、驚くとともに、読めば読むほどに、この地球上での進化で何故に、そして如何にこの複雑精緻な仕組みが築かれていったのだろうか、と想わずにはいられませんでした。著者自身が「人間社会における現象を、細胞の世界にアナロジーとして持ち込んで解釈することには慎重でなければならないだろう。」(191ページ)と断りつつも、例えば異常なタンパク質が発生した際の対処方法など、まるで人類の築いた合理的な生産工場のようで、「見事に合理的なシステムであると驚くほかはない。」
HSP47、というコラーゲン・タンパク質を誘導する分子シャペロンについて、これを発見したのが著者であるそうで、その発見のいきさつ、仕組みなどが熱く語られています。著者の、タンパク質研究に対する情熱を感じ、私自身、何かこうした研究者の方々に憧れを憶えてしまいました。
細胞内小器官の機能の本質が分かる
(2008-09-26)
書名は「タンパク質の一生」であるが,この本は,細胞の機能を俯瞰し理解する上で,非常に優れた本である。いわゆる細胞生物学の本では,細胞内小器官自体について,その機能を解説するというスタイル,叙述方式になる。しかし,この本では,タンパク質の生成から,「成熟」,そして分解までを一連のプロセスとして描き,その中で各々のオルガネラの機能を展開するというスタイルとなっている。
勿論,細胞の機能は,タンパク質代謝系だけではなくて,エネルギー代謝系もあるので,タンパク質の生成分解過程だけで,細胞の機能が解明される訳ではないが,「タンパク質の一生」に細胞内小器官がどのように関与しているかという,一本筋の通った叙述方式は,オルガネラの役割を説明し,理解させる方法として,非常に有効で分かりやすいものであると思う。
少なくとも,評者にとっては,本書により,細胞内小器官の機能の連関の一部を理解できたような気がする。
生命の精緻な機構に驚かされる
(2008-08-24)
DNAには、タンパク質のアミノ酸配列が塩基配列としてコード化されている。
その塩基配列をRNAが読み取り、アミノ酸の鎖ができ、タンパク質が合成される。
本書を読む前からそのことは知っていたし、そのことだけでも、十分に生命の不思議を
感じていた。しかし、本書で丁寧に説明されているのは、その後のプロセスにおける、
生命の仕組みの驚嘆すべき精緻さである。
一次元のアミノ酸の鎖から、どのようにして複雑な構造と機能を持つタンパク質が
形成されてゆくのか? 形成されたタンパク質は、細胞内をどのようにして
運ばれてゆくのか? 大きなタンパク質が形成されてしまった後では、膜を通過できない
場合があるではないか。その場合はどうなっているのか? 中にはタンパク質がうまく
形成されない場合もあるだろう。その場合はどのような機構が働くのか?
本書には、細胞内におけるタンパク質の誕生、成長、輸送、死、そして品質管理の
仕組みが、専門外の読者にもわかりやすく、読みやすい文体で記述されている。
ページをめくるたびに、細胞内に存在する精巧な機構に、驚きの声をあげそうになった。
分子生物学が明らかにしたところによると、我々の身体を形づくっている細胞の中で、
音も立てずに素晴らしいスピードでまことに合理的な機構が働いているのだ。
この仕組みが、進化の過程で発達してきたことを考えると、生命の不思議さに
改めて感動する。
著者もあとがきで述べているが、いわゆる「科学もの」は一般の読者に伝えるのが
難しい。正確に伝えようとすると専門的になりすぎ、一般を意識しすぎると中途半端
なものになってしまいやすい。本書は、そのような困難な課題をみごとに乗り越えて、
正確でかつ一般の読者にも分かりやすい、稀有な書物である。
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