金融権力―グローバル経済とリスク・ビジネス (岩波新書) - 和書 - Med草子アマゾンショップ

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本山 美彦

岩波書店

グループ:Book

ランキング:16907

価格:¥ 819

発売日:2008-04

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カスタマーレビュー

いまこそ、新たな「金融」を考える時である。  (2008-12-31)
 今年を振り返れば、サブプライム危機からはじまり、リーマンショックをきっかけとして金融危機そしていまや世界同時不況という様相が深刻化しつつある中で一年を終えようとしている。

 本書は、この世界同時不況の根源でもある「金融」に焦点を当てて、なぜ世界経済がこのような状況に陥ってしまったのかを、歴史的に解き明かしている。金融危機をめぐって、実に様々な書物が出版されているが、それらの中でも本書は最も優れた一冊である。

 著者の考えは、明確である。戦後日本の驚異的な発展に貢献してきた日本の銀行システムは、アメリカからの構造改革という名の圧力により解体され、根拠のない自己資本比率規制がかけられ、日本を支えていた間接金融は弱体化してしまった。
 その一方で進められてきた直接金融の弊害が、短期的利益追求にいっそうの拍車がかかり、債権の証券化とリスクの他者への転嫁が行き着いた先が、サブプライム危機である。
 この流れをさかのぼれば、ミルトン・フリードマンを代表とするシカゴ学派による市場の自由化がある。

 この市場こそが自由という考え方に対して、世界初の先物市場「堂島米会所」の事例は、今の原油や穀物価格の急騰と下落の流れと完全に相似形をなしていることに、歴史に学ばない人類の悲しさを感じてしまう。

 戦後の日本の主食であった米は、食管会計制度によって高騰が避けられ、多くの日本人を飢えから救ってきた。この時に、デリバティブのような市場放任制度を持ってきたら、庶民の生活は、確実に破壊されていただろうと断言している。

 いまこそ、新たな「金融」を考える時である。

何を説明したいのか  (2008-07-22)
金融関連事象を経済学理論などを使用して説明を試みているが、いずれも中途半端な形に終わっていく気がしてならない。又、金融商品などに関してはかなり誤解しているのか、デメリットのみ取り上げているのか、金融権力というタイトルからその様にしているのか、読む場合には気をつけて読む必要がある。
アメリカの金融支配モデルの問題は否定できず、その問題点を扱った書籍は多々あるので、本書での説明もその一つと考えて比較して読むことをお勧めします。

最新経済事象を陰謀理論で解説した書  (2008-07-19)
「グローバル経済とリスク・ビジネス」という副題に惹かれてこの本を読み始めたが、「陰謀理論」の色彩があまりに色濃くて、正直驚いた。CDOを短期債としている点等、内容的にも?の点が多く、経済学者が書いた本とはとても思えない。また、ESOPを手放しで礼賛する一方、業績連動報酬制度を切り捨てる思考もよく理解できない。最近の岩波新書らしい出来の一冊。

金融経済、資本主義の隘路  (2008-07-13)
 この本読むと、長らく続いてきた金融経済、もっと言っちゃうと資本主義ってもの自体が大きな曲がり角、あるいは隘路に陥っちゃってるってのを切実に感じるね。サブプライムローン問題なんて、最初は対岸の火事程度にしか認識していなくってお恥ずかしい限りなんだけど、いまやグローバルに“実体経済なんてどこにも無い”んだよね。著者言うところの「カネこそが商品」であって。格付け会社が幅を利かせる金融権力最先端の国アメリカとは一線を画していた日本ですら、ホリエモン(超懐かしい!)、村上ファンドなんて事象が世間を騒がせる位、金融権力が市民権を得てしまってる訳だけど、本家本元のアメリカが、サブプライムローン問題では、まったくなすすべが無かったってのはショックだよな。グローバル化も金融権力もある種イケイケドンドンで、てめえらのこと、直近のことしか考えていなくて、破滅に向かっていることを知りつつもあえて知らないふりをしているってのはやっぱりどうかと思うぜ!今は「環境」にしても「エネルギー」にしても「金融」「経済」の枠組みの中で語られているけど、近い将来、「金融」「経済」って枠組み自体が、“グローバルに”崩壊しちゃう危険性だってある訳だからさ。もう「環境」も「エネルギー」もお題目の段階じゃないんだぜ、きっと。
 この本のシメの言葉、「いま求められているのは、「自由」の美名の下で金融ゲームに走る金融権力をいかに制御するのか、という社会の知恵である」、これ、ほんと本気で考えないとね。いつの時代でも、気がついた時には「おまえはすでに死んでいる」ってことなのかもしれないけどさ。

経済学者の金融論?  (2008-07-04)
「直接金融の弱点は、長期資金の確保が困難になるところにある」と早々に書いてある(12頁)のを読んでまず「おや、おや」と思う。直接金融というのは長期資金を市場を経由して供給、調達する制度ではなかったのか?これを別としても著者のアナクロニズムはいたるところに顔を覗かせている。「アメリカからの執拗な構造改革の要請によって、日本の金融システムは根底から変えられた」に始まるその前段の3頁ほどは旧き良き時代の「護送船団」方式の、賛歌とは言わないまでも、ノスタルジアで埋まっている。市場や国際的な慣行を干渉としか受け取れなかった「過去官僚」や彼らと運命を共にした往年の銀行家たちの中には喜ぶ者もいるだろう。先物市場や変動相場制への懐疑論は110頁以降に開陳されている。
本書は「金融権力」という表題の下に「…金融革命を解剖し、2007年、サブプライム問題で露呈したリスク・ビジネスの行き詰まりを明らかにすることを課題としている」(プロローグ)。サブプライム問題のキイ・ワードの一つはSIV(Structured Investment Vehicle)である。ほかにもCDO、ABCP、RMBSなど定義を必要とする用語がふんだんに出てくるがSIVだけはその多様性をしっかりと理解しておきたい。SIVは12頁、57頁、167頁などに登場するがそのつど似て非なるもののような印象を受ける。(たとえばSIVとSPIV−本書ではSPV−を混同していないだろうか。)
アメリカの住宅市場の破綻に端を発したサブプライム・ローン問題は銀行の信用を揺るがせ、すぐさま激震となって世界中に広まった。かれらは(SIVをconduitとして)短期で借り入れた資金を長期の住宅融資にまわしていたからである。これは今に始まった問題ではない。(著者が懐かしむ伝統的な日本の銀行業はこのような資金供給システムであった。)このようなリスク志向はどのようにして高まったのか。著者が紹介するもろもろの逸話を楽しむのに吝かではないが、本来の課題の扱いは心許ない。